いくらで売れる?物語でわかる「簡易査定」と「のれん」の話

「うちの会社、いくらで売れるんだろう。」町⼯場のA社⻑は、決算書の束を⾒つめながらため息をつきました。⿊字は続いている。ただ、後継者がいない。この先どうするか——答えは⾒えないままです。そんなA社⻑が初めて相談した⽇のこと。アドバイザーがメモ⽤紙に太い字でこう書きました。
企業価値 = 財務の価値 + のれん(将来性)
「のれんって何ですか?」「数字には映らない、会社の強みです。⼈、仕組み、信頼、リピート、これからも稼げる⼒ですね。」
1. ⾯談で⽩紙に書かれた「4 ⾏の簡易査定」
アドバイザーは次に、査定の流れをさらりと4⾏で⽰しました。
1. 決算書を3期分⾒る(売上・利益・借⼊の推移)
2. 利益⽔準をつかむ(1年でどの程度の利益を安定して出せるか)
3. 同業の相場倍率を当てる(例:利益の2〜5倍)
4. 純資産を加減して概算(借⼊や資産で増減)
「ここまでは“数字の世界”です。でも、ここからが本番。“のれん”で上振れも下振れもします。」
2. 「のれん」の正体ー数字の外側にある価値
A社⻑は⾸をかしげました。「のれんって、うちにあるんでしょうか?」
アドバイザーは、⼯場を⾒て回りながらチェックを始めます。
・技術・資格が会社の「売り」になっているか顧客との取引は⻑く続いているか
・特定の⼈が休んでも仕事が回る体制か(属⼈性の低さ)
・離職率は低いか/チームワークは良いか
・地域や業界での信頼・知名度はあるか
・リピート・紹介が多いか
・仕組み化・マニュアル化は進んでいるか
「当てはまるほど、“のれん”は厚くなる。買い⼿は“未来の利益”にお⾦を払うんです。」
3. のれんが乗った瞬間ー⼩さな⼯場の実例
実際に決断に至るまでの流れを、表にすると以下のようになります。
⼯場の棚には、⼯程ごとに⾊分けされた⼿順書。現場リーダーは、誰が抜けても同じ品質を出せるよう交代制で教育中。売上の7割は、創業時から続く3社の安定取引。「ここ、強いですね。」アドバイザーはホワイトボードに「のれん+」と書き⾜しました。
技術は唯⼀無⼆である必要はない。「誰がやっても同じ品質が出る仕組み」 と 「⻑く続く顧客関係」。この2つが揃うだけで、買い⼿の安⼼感は⼀気に上がります(=評価が上に触れやすい)。
4. 今⽇からできる準備ー査定の精度を上げる「5 つの資料」
「のれん」を語るにも、⼟台(資料)が必要です。A社⻑が最初に⽤意したのは、この5点でした。
1.今後の⾒通し(保守的/標準/挑戦の3シナリオ)
2.決算書3期分(売上・利益の推移がひと⽬で分かる整理表)
3.契約書・借⼊資料(負債・担保・保証の状況を明確化)
4.顧客・取引先リスト(継続年数・取引⽐率・担当者)
5.主要社員のリスト(役割・代替可否・育成状況)
これらが揃うと、概算(簡易査定)の精度も、のれんの説得⼒も、ぐっと増します。
5. よくある誤解と、現場の答え
Q. 売上が⼤きければ⾼く売れる?
A. 売上の“⼤きさ”より、“続く仕組み”と“顧客の厚み”。のれんを⾒ます。
Q. 利益が少し落ちてきたけどダメ?
A. 業界動向や将来の打ち⼿次第。将来性の説明でのれんは乗ります。
Q. まず何から始める?
A. 従業員・顧客・⼿順の“⾒える化”。属⼈性が下がるほど、評価は安定。
6. まとめ:「数字」と「のれん」の⼆⼑流でいこう
簡易査定は、出発点にすぎません。最終的な評価を分けるのは、「のれん=将来も利益を⽣む⼒」をどれだけ語れたか、です。A社⻑は⾔います。「特別な発明なんてない。でも、⼈と仕組みと信頼は、ちゃんと積み上がっていたんだと気づきました。」まずは、明⽇からできる“⾒える化”から。その⼀歩が、あなたの会社の「のれん」を太くしていきます。


